カリタ式は、構造が味を安定させてくれるドリッパーです。底に並んだ小さな三つの穴が湯の流れをゆるやかに制限し、注ぎ方の細かなブレを器具の側で吸収します。V60が「注ぎで攻める」道具だとすれば、カリタ式は「構造に任せる」道具。この記事では、三つ穴と平底がなぜ安定に効くのか、V60との違い、基本の淹れ方、向いている人までを順に見ていきます。数字はすべて目安なので、幅で覚えて大丈夫です。

カリタ式とはどんなドリッパーか

カリタ式の目印は、底に並んだ小さな三つの穴です。日本で生まれたドリッパーとして知られ、大きく2つの系譜があります。

ひとつは、昔ながらの台形(扇形)タイプです。底が細長い溝になっていて、そこに三つの穴が一列に並びます。喫茶店で長く使われてきた、いちばん見慣れた形かもしれません。もうひとつが、底が平らなウェーブシリーズです。平底に三つの穴が配置され、波型のひだが付いた専用ペーパーと組み合わせて使います。

形は違っても、考え方は共通しています。穴を小さく絞り、湯の落ちる速さを器具の側で受け持つ。この設計が、カリタ式の性格を決めています。

台形(扇形)タイプ 底の細長い溝に、三つ穴が一列 ウェーブ(平底)タイプ 平らな底に三つ穴+波型ペーパー 共通点:小さな三つの穴が、湯の落ちる速さを受け持つ
図:台形とウェーブ。形は違っても「小さな三つ穴」という考え方は同じです

なぜ安定するのか|三つ穴と平底の構造

湯がすぐには落ちきらず、粉の上に薄い湯の層がとどまるからです。この「湯だまり」が、注ぎ方のブレをならす緩衝材のように働きます。

小さな三つの穴は、湯の出口を細く絞ります。注ぐ速さが多少変わっても、出ていく速さはあまり変わりません。その差の分だけ湯がドリッパーの中にとどまり、粉全体が湯に浸る時間が生まれます。湯に浸して成分を引き出す方式を浸漬式と呼びますが、カリタ式は湯を通す透過式でありながら、浸漬式に近い要素を併せ持つわけです。

平底のウェーブでは、さらに粉の層の厚さがそろいます。円すい形は中心ほど粉が深くなりますが、平底なら湯がどこを通っても同じ深さです。三つの穴が出口を分散させることもあり、湯の通り道が偏りにくくなります。湯だまりが時間をならし、平底が場所をならす。この二段構えが「安定」の中身です。

三つ穴×平底の断面(ウェーブ) ① ② ③ ① 湯だまり 注ぎのブレを時間でならす ② 均一な粉の層 平底だから、湯がどこでも 同じ深さで通る ③ 小さな三つ穴 出る速さを器具が制限し、 出口を3点に分散する
図:湯だまりが時間をならし、平底が場所をならす。安定はこの二段構えから生まれます

V60と何が違うのか

いちばんの違いは、湯の速さを決める主体です。V60は注ぎ手が決め、カリタ式は構造が決めます。

V60は大きな一つ穴が湯をせき止めないため、注ぐ速さがほぼそのまま抽出の速さになります。自由度が高いぶん、腕の差も出ます。カリタ式は穴が流速を受け持つので、同じレシピなら誰が淹れても近い着地になりやすい。注ぎで味を作る楽しさについてはV60の使い方に書きましたが、方向性が対照的な道具です。

V60:注ぎ手が速さを決める 大きな一つ穴=湯を止めない 自由度が広い・注ぎが味に出る カリタ式:構造が速さを決める 小さな三つ穴=湯だまりができる 再現しやすい・ブレに強い
図:同じ透過式でも、速さを決める主体が正反対です
カリタ式(三つ穴) V60(大きな一つ穴)
形状 台形、またはウェーブの平底 円すい形
底の穴 小さな穴が3つ 大きな穴が1つ
流速を決めるもの 主に器具の構造 主に注ぎ手
味の傾向 まろやかで、再現しやすい 注ぎ方しだいで幅が広い
向いている人 毎回同じ味に着地させたい人 注ぎで味を調整したい人

どちらが上ということではなく、性格の違いです。同じ豆を両方で淹れて、聞き比べてみるのも面白い楽しみ方です。

基本の淹れ方|カリタ式の手順

手順そのものは、ハンドドリップの基本と変わりません。粉12g・湯180ml前後(粉1:湯15前後)、湯温90℃前後、蒸らし30秒前後が出発点です。

  1. ペーパーをセットし、湯を回しかけて器具を温める(この湯は捨てる)
  2. 中挽き〜中細挽きの粉12gを入れ、表面を平らにならす
  3. 30ml前後の湯で粉全体を湿らせ、30秒前後蒸らす
  4. 3〜4回に分けて注ぐ。湯面が下がりきる少し前に、次を静かに重ねる
  5. 合計180ml前後まで注ぎ、湯が落ちきったらドリッパーを外す

カリタ式ならではのコツは、湯面の高さをだいたい一定に保つことです。湯だまりを切らさず、かといって縁まで溜めすぎない。この一点だけ意識すれば、あとは構造が仕事をしてくれます。道具のそろえ方や蒸らしの意味など、土台になる部分はハンドドリップの基本にまとめています。

挽き目は中挽き〜中細挽きから始めます。湯の抜けが構造で制限されるぶん、細かくしすぎると重たさが出やすくなります。粒度の考え方はコーヒーの挽き方と粒度を、焙煎度と湯温の関係は焙煎度の違いをどうぞ。

カリタ式が向いているのはどんな人か

ひとことで言えば、考える回数を減らして、同じ一杯に戻ってきたい人です。

毎朝決まった味で一日を始めたい。家族の分をまとめて淹れることが多い。注ぎの練習より、豆の違いを味わうことに時間を使いたい。そんな人には、構造が安定を受け持つカリタ式が心強い道具になります。反対に、淹れるたびに条件を動かして味の変化そのものを楽しみたい人は、V60のほうが遊びの余地が広いはずです。

灯台の光が毎晩同じリズムで回るように、いつもの味が待っていてくれる。カリタ式の安心感は、そういう種類のものだと思います。

mumuの豆でカリタ式を淹れるなら

構造が安定を受け持ってくれるぶん、味を動かす主役は挽き目と豆選びになります。

mumuでは、エチオピア シダモ(浅煎り)を挽き目だけ変えて淹れ比べたことがあります。中細挽きでは甘みやコクがしっかり感じられました。中挽きではフルーティなフレーバーが際立ち、クリアですっきりした一方、やや物足りない印象も残りました。mumuの好みは中細挽きですが、これは好みの問題なので自由で構いません。注ぎで差がつきにくいカリタ式では、この挽き目ひと目盛りの違いが、そのまま味の違いとして現れてきます。

カリタ式での推奨レシピは、実際に淹れて測ってからここに載せたいと考えています。

【一次情報プレースホルダ】ここにmumuのカリタ式実測レシピが入ります。〔例:シダモ(浅煎り)は粉◯g・湯◯ml・湯温◯℃・◯投・総時間◯分。台形とウェーブの淹れ比べ所感…(例示。事実として断定しない)〕

今日の一杯は、レシピを固定して豆の声を聞くところから。豆から選びたくなったらmumuの珈琲豆を、粉と湯の考え方を整えたくなったらコーヒーとお湯の比率をどうぞ。

よくある質問

Q. 台形とウェーブ、どちらを選べばいいですか? 安定するという性格はどちらも同じです。手に入りやすさなら台形、粉の層の均一さまで求めるならウェーブがひとつの目安になります。比べて迷い続けるより、まず一つを選んで使い込むほうが早く上達します。

Q. ペーパーはV60用と共用できますか? 形が違うため、それぞれ専用のものを使います。台形タイプには台形用を、ウェーブには波型のひだが付いた専用ペーパーを合わせます。円すい用のペーパーでは形が合いません。

Q. 注ぎ方はV60と同じでいいですか? 基本は同じで、中心から「の」の字に細く注げば十分です。違いは、注ぎの正確さが味に響きにくいこと。カリタ式では軌道の美しさより、湯面の高さをだいたい保つことを優先してください。

Q. 落ちるのが遅くて、味が重たくなります。 まず挽き目をひと目盛り粗くしてみてください。穴が流速を制限する構造のため、細かすぎる粉や微粉の多さがそのまま重たさにつながりやすい器具です。注ぎを速くするより、粒度で直すほうが着実です。

Q. 初心者にはV60とカリタ式のどちらが向いていますか? 最初の一杯の安定を優先するなら、カリタ式のほうが穏やかです。注ぎの練習ごと楽しみたいならV60でも構いません。どちらを選んでも、同じ器具を使い続けて条件をそろえることが、いちばんの近道です。