デカフェは「カフェインを抜いたコーヒー」ですが、その中身は製法によってずいぶん違います。ここではデカフェが何かという定義から始めて、3つの代表的な製法、カフェインがどれくらい残るか、普通のコーヒーとの味の差、そしてどんな人に向くかまでを、順番に見ていきます。カフェインとの距離を、少しだけ選べるようになる話です。

デカフェとは?カフェインを大きく減らしたコーヒー

デカフェとは、生豆の段階でカフェインの大部分を取り除いたコーヒーのことです。「ゼロ」ではなく、「うんと少ない」と捉えるのが正確です。

デカフェ(decaffeinated)は、もともとのコーヒーからカフェインを抜いたものを指します。似た言葉に「カフェインレス」がありますが、日本ではほぼ同じ意味で使われています。一方「ノンカフェイン」は、たんぽぽコーヒーや麦茶のように、はじめからカフェインを含まない飲み物を指すことが多い言葉です。

つまりデカフェは、あくまでコーヒー豆から作られます。コーヒーの香りや味わいはそのままに、カフェインだけを控えたい——そんな願いに応えるための一杯です。

デカフェはどうやって作る?3つの製法

カフェインの抜き方には、大きく3つの方法があります。水を使う「スイスウォーター法」、二酸化炭素を使う方法、そして薬品(溶剤)を使う「有機溶媒法」です。

CO₂ スイスウォーター二酸化炭素有機溶媒 水に溶かして除去高圧のCO₂で抽出溶剤で溶かし出す 薬品を使わない香りが残りやすい安価で広く普及
図:カフェインを取り除く3つの代表的な方法。どれで抜いたかで、味の残り方も少し変わります

スイスウォーター法は、水だけを使う製法です。生豆を水に浸してカフェインを溶かし出し、活性炭のフィルターでカフェインだけをこし取ります。薬品を使わないため、日本のデカフェでもよく採用されています。

二酸化炭素を使う方法は、高い圧力をかけた二酸化炭素でカフェインを抜き取ります。狙ってカフェインだけを取り出しやすく、香りの成分が比較的残りやすいとされる製法です。設備にコストがかかるため、価格はやや上がりがちです。

有機溶媒法は、塩化メチレンや酢酸エチルといった溶剤でカフェインを溶かし出す方法です。世界では広く使われていますが、溶剤の名前に不安を覚える人もいます。各国の基準では残留量が厳しく管理されており、たとえば米国では焙煎豆に残る塩化メチレンは10ppm以下と定められています(FDA・21 CFR 173.255)。

製法 使うもの カフェインの抜け方 味の傾向 ひとこと
スイスウォーター 水・活性炭 しっかり抜ける まろやか寄り 薬品を使わない安心感
二酸化炭素 高圧のCO₂ 狙って抜ける 香りが残りやすい 価格はやや高め
有機溶媒 溶剤(酢酸エチル等) しっかり抜ける 製法により差 安価で流通量が多い

味の傾向はあくまで目安で、豆の質や焙煎、鮮度のほうが仕上がりを大きく左右します。パッケージに製法が書かれていることも多いので、気になる方は表示を確かめてみてください。

カフェインはどれくらい残る?ゼロではない

デカフェは、カフェインを大きく減らしますが、完全にはなくなりません。目安として、9割以上のカフェインが取り除かれた状態です。

基準は国や規格で異なります。EUでは、焙煎豆の無水カフェインが乾燥重量あたり0.1%以下であることが「デカフェ」表示の条件です(EU指令1999/4/EC)。米国では、もとのカフェインの97%以上を取り除くことが求められています。抜き方の考え方は違っても、「大部分を減らす」という点は共通しています。

一杯(約240ml)あたりのカフェイン量の目安 通常のコーヒー 約95mg デカフェ 約2〜5mg(多くても15mgほど) ※製法や淹れ方で変わります。デカフェもカフェインはゼロではありません
図:一杯あたりで比べると、デカフェのカフェインはごくわずか。ただしゼロにはなりません(USDA値の目安より)

一杯あたりで見ると、その差は分かりやすくなります。通常のコーヒーが約95mgなのに対し、デカフェは約2〜5mg、多くても15mgほどとされています(USDAの目安)。夜にコーヒーの香りを楽しみたいとき、この差は小さくありません。

とはいえ「わずかに残る」ことは覚えておいてください。カフェインをまったく取りたくない事情がある場合は、含有量の表示や、コーヒー以外の選択肢もあわせて考えると安心です。

普通のコーヒーと味はどう違う?

正直に言えば、デカフェは通常のコーヒーと比べて、風味がやや軽くなる傾向があります。カフェインを抜く過程で、香りや味の成分も少し一緒に抜けてしまうためです。

かつては「デカフェは味が薄い」と言われがちでした。けれど近年は製法が進み、豆の個性を残したデカフェも増えています。とくにスイスウォーター法や二酸化炭素を使う方法は、香りが残りやすいとされています。

味の差は、豆の鮮度でも大きく変わります。デカフェも普通のコーヒーと同じで、焙煎から時間が経つほど香りは抜けていきます。新しいものを選び、淹れる直前に挽くだけでも、印象はぐっと良くなります。挽き方の基本はコーヒーの挽き方でも触れています。

物足りなさを感じたら、少しだけ濃いめに淹れてみるのも手です。豆の量をやや増やす、湯温を上げすぎない——そうした小さな調整で、デカフェらしからぬ満足感が出ることもあります。

デカフェはどんな人に向く?

デカフェは、「コーヒーの時間は続けたいけれど、カフェインは控えたい」という人に向いています。目的は治療ではなく、あくまで日々の心地よさの調整です。

まず、夜にコーヒーを楽しみたい人。カフェインには覚醒を促す働きがあり、感じ方には個人差がありますが、夜のカフェインが眠りに響く人もいます。就寝前の一杯をデカフェに替えると、香りだけを静かに楽しめます。

次に、カフェインに敏感な人や、一日に何杯も飲む人。杯数が増えるとカフェインの総量も増えます。午後の何杯かをデカフェに切り替えると、量を抑えながら本数は減らさずに済みます。

妊娠中・授乳中の方、持病がある方、薬を服用している方は、カフェインの扱いについて自己判断せず、かかりつけの医師や専門家に相談してください。「どれくらいなら大丈夫か」は人によって違い、ここで一律には言えないためです。

デカフェを選ぶ・淹れるときのポイント

選ぶときに見たいのは、製法・鮮度・焙煎度の3点です。難しく考えず、この順に確かめると失敗が減ります。

製法は、パッケージの表示で分かることが多いです。薬品が気になるならスイスウォーター法や二酸化炭素の製法を、価格を優先するなら有機溶媒法を、というように選べます。鮮度は、焙煎日の新しいものを選ぶのが基本です。焙煎度で味の方向も変わるので、酸味が好きなら浅め、コクが好きなら深めを目安にしてください。焙煎度の違いは焙煎度の違いで詳しく説明しています。

淹れたあとの保存も、通常の豆と同じ考え方でかまいません。酸素・湿気・高温・光を避けるのが基本です。詳しくはコーヒー豆の保存方法を参考にしてください。

なお、mumuは現在デカフェの豆を扱っていません。豆選びの幅を広げたいときは、取り扱い豆の一覧から通常の豆もあわせてのぞいてみてください。

朝は通常の豆、夜はデカフェ — 時間帯で考える

mumuは、珈琲を朝・夕・夜という時間の流れで考えています。カフェインとの付き合い方も、この時間軸に重ねると自然に決まってきます。

時間帯で、カフェインと付き合う ← カフェインは多め                少なめ → 通常の豆で目を覚ますほどほどにデカフェで静かに
図:朝は通常の豆でしゃんと、夜はデカフェで静かに。カフェイン量を一日のなかでゆるやかに下げていく考え方

朝は、通常の豆でそっと目を覚ます。昼下がりは好きな一杯を。そして夜、カフェインが気になる時間には、市販のデカフェに替えて香りだけを味わう。灯台の光が時間で表情を変えるように、珈琲も一日のなかで濃淡があっていいと考えています。

これは決まりではなく、ひとつの入り口です。夜に通常のコーヒーを飲む日があってもいいし、朝からデカフェでゆっくり始める日があってもかまいません。mumuの豆づくりの考え方は焙煎所についてでも触れています。カフェインとの距離を、その日の自分に合わせて選んでみてください。

よくある質問

Q. デカフェとカフェインレスは違うものですか? ほぼ同じ意味で使われています。どちらもコーヒーからカフェインを取り除いたものを指します。「ノンカフェイン」は、たんぽぽコーヒーや麦茶のように、はじめからカフェインを含まない飲み物を指すことが多い言葉です。

Q. デカフェのカフェインは本当にゼロですか? ゼロではありません。9割以上は取り除かれますが、わずかに残ります。一杯あたり約2〜5mg、多くても15mgほどが目安です(通常のコーヒーは約95mg)。まったく取りたくない事情がある場合は、表示を確かめてください。

Q. デカフェは体に悪いと聞きましたが本当ですか? 製法で使う溶剤の残留量は、各国の基準で厳しく管理されています。たとえば米国では焙煎豆に残る塩化メチレンは10ppm以下と定められています。気になる場合は、水を使うスイスウォーター法や二酸化炭素の製法を選ぶ方法もあります。健康上の心配がある方は、医師や専門家に相談してください。

Q. デカフェは普通のコーヒーより味が落ちますか? 風味はやや軽くなる傾向がありますが、近年は差が小さくなっています。豆の鮮度と焙煎度、淹れ方で印象は大きく変わります。新しい豆を選び、少し濃いめに淹れると満足感が出やすいです。

Q. 妊娠中でもデカフェなら飲んで大丈夫ですか? カフェインの摂取量については、体質や状況によって適切な範囲が異なります。デカフェにもわずかにカフェインは残るため、妊娠中・授乳中の方は自己判断せず、かかりつけの医師に相談してください。

Q. 夜に飲んでも眠りに影響しませんか? 感じ方には個人差があります。デカフェはカフェインがごく少ないため、通常のコーヒーより夜に向く選択肢です。ただしゼロではないので、カフェインに敏感な方は量や時間を調整してみてください。