コーヒーを一日一杯でも飲む人は、たぶん今日もどこかでブラジルの豆を口にしています。世界のコーヒーのおよそ3分の1を生んでいる国で、喫茶店のブレンドや缶コーヒー、家庭用の粉まで、その多くにブラジル産が入っているとされます。派手さで名前を覚える豆ではなく、ナッツやチョコのように親しみやすい味で、静かに土台を支える豆です。世界最大の生産国の味わいを、順に見ていきます。
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国
ブラジルは長年、生産量で世界一を続けているコーヒーの国です。国際コーヒー機関などの統計でも、単独で世界のかなりの割合を占めるとされ、二位以下を大きく引き離しています。
広さがそのまま個性になっています。国土の南東部を中心に、なだらかな高原地帯が農園に向いていて、機械で一気に収穫できる平坦な畑が多いのが特徴です。手摘みが中心の産地とは、育て方の考え方から違います。
大規模に、安定した品質で、大量に。この三つがそろうため、ブラジルは世界のコーヒーの「基準の味」をつくる役割を担ってきました。特別な一杯というより、毎日の一杯を支える豆、という位置づけです。
とはいえ近年は、小さな区画を選び抜いたスペシャルティのロットも増えています。土台の豆というイメージだけでは語りきれない幅が、この国にはあります。
ブラジルコーヒーの味の特徴
ブラジルコーヒーの持ち味を一言でいえば、ナッツやチョコレートを思わせる香ばしさと、低めの酸、そしてなめらかなコクです。とがったところが少なく、飲み口がまろやかで、後味に甘さが残ります。
エチオピアのような花や柑橘の華やかさ、明るい酸を前面に出すタイプではありません。ブラジルの魅力は、その逆にあります。角のない口当たりと、ローストナッツやミルクチョコを思わせる親しみやすさ。「コーヒーらしいコーヒー」と言われることが多いのも、この方向性のためです。
酸が穏やかなので、酸味が苦手な人の入口にも向きます。ミルクや砂糖ともよく馴染み、日常づかいでくせが出にくいのも、長く選ばれてきた理由のひとつです。酸味が得意でない方は、コーヒーの酸味が苦手な人へもあわせてどうぞ。
大規模生産と精製方法(ナチュラル/パルプドナチュラル)
ブラジルらしい香ばしさと甘みは、産地の性格に加えて、乾燥式を中心とした精製方法とも関わっているとされます。水が豊富でない広大な畑で効率よく乾かすため、実ごと天日で干す方法が主流になってきました。
ナチュラルは、実をつけたまま乾かし、あとから種(生豆)を取り出す方法です。乾く間に果肉の甘みが種に移り、ナッツやチョコのような香ばしさ、しっかりしたコクが出やすいとされます。ブラジルの定番の味は、この製法と結びついています。
パルプドナチュラルは、果肉だけを取り除き、種のまわりのぬめり(粘液質)を残して乾かす、ブラジルで広まった方法です。甘みを残しつつ、ナチュラルより澄んだ印象になりやすく、近年のスペシャルティでよく使われます。精製の全体像はコーヒーの精製方法でも解説しています。
主な産地とフレーバーの傾向
ブラジルの畑は南東部に集まっています。ミナスジェライス州を中心に、地域ごとにゆるやかな味の傾向があり、標高や気候の違いがカップに表れます。
なかでもよく名前が挙がるのが、内陸の高原地帯セラード(セラード・ミネイロ)です。乾季と雨季がはっきりしていて機械化が進み、粒がそろった均一で明快な味に仕上がりやすいとされます。南部のスルデミナスは、甘くまろやかな飲みやすさで知られる大産地です。
| 産地 | 位置 | おおよその標高帯 | フレーバーの傾向 |
|---|---|---|---|
| セラード・ミネイロ | 内陸の高原 | 約900〜1,300m | ナッツ・チョコ、均一で明快 |
| スルデミナス | 南部 | 約900〜1,300m | 甘くまろやか、コクがある |
| モジアナ | 東部の山地 | 約900〜1,200m | しっかりしたコクと甘み |
| バイーア | 北東部 | 約1,000m前後 | クリーンで軽やか、新興産地 |
標高はあくまで目安です。ブラジルは他の高地産地に比べると畑の標高が低めで、それも酸がやわらかくコクが乗りやすい味わいにつながっていると言われています。品種や産地の見取り図はコーヒー豆の種類もどうぞ。
なぜブレンドのベースに選ばれるのか
ブラジルがブレンドの土台に選ばれるのは、味に「引き算の余白」があるからです。酸やクセが穏やかで甘みとコクが安定しているため、他の個性的な豆を重ねても喧嘩せず、全体をまとめる役をこなします。
華やかな酸のアフリカ産や、際立つ個性の豆は、単独だと好みが分かれます。そこにブラジルを加えると、角がとれてバランスが整い、毎日飲める顔つきになります。土台が静かだからこそ、上に乗せた香りが引き立つ、という関係です。
もちろん、ブラジルは単独(シングルオリジン)でも十分に楽しめます。ナッツやチョコの親しみやすさは、そのまま一杯の主役にもなります。ブレンドと単一産地の考え方の違いは、シングルオリジンとブレンドで詳しく触れています。
mumuで味わう、ブラジルに近い豆・対照的な豆
先にお伝えしておくと、mumuは現在ブラジル産の豆を扱っていません。取り扱いはエチオピア シダモ(浅煎り)とインドネシア マンデリン(深煎り)の2種です。ただ、この2種はブラジルの味を理解する物差しとして、ちょうど両端に立ってくれます。
エチオピア シダモは、ブラジルとは対照的な豆です。グレープフルーツやベルガモットのような華やかな酸と優しい甘みが持ち味で、「低い酸・ナッツやチョコ」のブラジルとは、味の方向がほぼ反対を向いています。酸のある豆とない豆を飲み比べると、ブラジルの穏やかさが逆によく分かります。
インドネシア マンデリンは、コクの深さという点でブラジルと通じるところがあります。深煎りの重厚なコクとほろ苦さは方向が近く、一方でマンデリン特有のアーシーな香りはブラジルにはない個性です。苦味やコクがどの豆から来るのかは、苦味とコーヒー豆もあわせて読むと輪郭がはっきりします。
mumuはブラジルを扱っていませんが、味の物差しになる2種を販売しています。
味の地図は、両端を知ると真ん中が見えてきます。ブラジルの穏やかさが気になったら、まずは対照的な一杯から試すのも遠回りのようで近道です。mumuの取り扱い豆の一覧には、狙った焙煎度も書き添えています。
ブラジルコーヒーの楽しみ方
ブラジルは、焙煎度でも淹れ方でも幅広く受け止めてくれる、扱いやすい豆です。まろやかで失敗が出にくいので、豆選びに迷ったときの基準にもなります。
中煎りあたりでは、ナッツやキャラメルのような甘い香ばしさが素直に出ます。深めに煎るとチョコやコクが増し、ミルクとの相性がよくなります。焙煎でどう味が動くかは、焙煎度の違いでも解説しています。
酸が穏やかなので、豆本来の甘みを味わう飲み方に向きます。ハンドドリップなら湯温はやや高めから始め、苦味が立ちすぎたら少し下げる、くらいの調整で十分です。エスプレッソやミルク系の土台としても、ブラジルは安定した相棒になります。
よくある質問
ブラジルコーヒーの特徴は? ナッツやチョコレートを思わせる香ばしさと、低めの酸、なめらかなコクが特徴です。とがったところが少なく飲みやすいため、ブレンドの土台や毎日の一杯として世界中で親しまれています。
ブラジルコーヒーは酸味が強いですか? 一般的に酸味は控えめとされます。畑の標高が比較的低いことや乾燥式の精製が関わっていると言われ、酸が苦手な人の入口にも向きます。甘みとコクが前に出るタイプです。
なぜブラジルはブレンドのベースに使われるのですか? 味にクセが少なく、甘みとコクが安定しているためです。個性の強い豆と重ねても全体をまとめやすく、バランスを整える土台の役をこなします。もちろん単独でも楽しめます。
セラードはどんな産地ですか? ブラジル内陸の高原地帯で、乾季と雨季がはっきりし機械化が進んだ大産地です。粒のそろった均一で明快な味に仕上がりやすいとされ、ナッツやチョコの風味で知られます。
mumuはブラジルの豆を扱っていますか? 現在は扱っておらず、取り扱いはエチオピア シダモ(浅煎り)とインドネシア マンデリン(深煎り)の2種です。華やかな酸のシダモは対照的な豆、深煎りのマンデリンはコクの方向で通じる豆として、味の比較にお使いいただけます。



